本番当日。
我々は、全長7マイル(11.4キロ)のサウス・カイバブ・トレイルを歩いてコロラド川まで下り、ファントムランチを目指す。
リムから谷底までの高低差は4780フィート(1460メートル)だ。
早朝にマズウィックホテル脇のシャトルバス停留所に集合し、サウス・カイバブ・トレイルヘッドへ。リムからおのおの記念撮影したりして、出発したのは6時。気になる天気はまずまずといったところ。朝日はすでにのぼっており、青い空に白い雲がモクモク湧いていた。
標高7200フィート(2195メートル)のトレイルヘッドから最初の数マイルはジグザグのスイッチバック。リムから見下ろす景色がデフォルトとなっていた我々にとって、数フィート下っただけでも大感激。
なにしろ、一歩一歩足を踏み出すたびに、目の前の景色が思わぬ展開で広がっていくのだ。サッサと通り過ぎるなど、もったいない。
それまでは平面的だった壮大な絵がたちまち3Dのパノラマに変わり、自分もその一部として取り込まれていくような感覚。
グランドキャニオンの中に下りていく。グランドキャニオンの一部になっていく。それがとにかくうれしかった。
トレイルの道幅は広く、ところどころ階段になっており、よく整備されている。全体的に緩やかで歩きやすい。
垂直に立つ崖の岩場に咲く可憐な野花、花が開きかけたウチワサボテン、下りながらの写真撮影も楽しかった。
最初に到着したのはOoh Aah Point(6440フィート/1965メートル)。
名前の由来はあまりに美しい眺めに、ウー、アーと感動するから。我々もバックパックをおろし、モデルポーズで写真撮影。
次に着いたポイントはCedar Ridge(6080フィート/1855メートル)。
ちょっとした平地になっていて、目印の杉の木のまわりで一休みする。
ここにはトイレも有り。水洗ではないけれど、きれいに掃除されていて、トイレットペーパーもついている。
その先はSkelton Point(5160フィート/1575メートル)。
ここまでで3マイル(約5キロ)だ。2000フィート(600メートル)下りたから、東京タワー2つ分下りたことになる。
ここまで来ると、すっかり谷間の中に入った感じ。リムから見下ろしていた岩の尖塔も見上げる形となった。
気づくと赤茶けていた土の色が灰色に変わっている。地層が変わったのだ。
出発地点からスケルトン・ポイントに至るまで、我々はすでに5つの地層を下りてきていた。
最初のカイバブ石灰岩層は2億7千万年前にできた地層で、5つ目のスーパイ・グループと呼ばれる地層は3億2千万年前にできた地層。
4千万年分の時間をさかのぼったことになる。
我々は壮大な時間の旅をしているのでもあった。
ちなみにこの先はレッドウォールと呼ばれる地層(実際は灰色なのだけれどね)。
そしてこの先、我々の旅は驚きの展開になるのであった。
(つづく)